むーまの まったり英語ブログ

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東京オリンピック事前合宿レポ⑤【南アフリカ出張マッサージ編】

 2週目の日曜日、練習は休み。南アフリカの選手がマッサージを受けたいとのことだったので、市役所職員のKさんが行きつけの整体院に依頼し、宿に出張マッサージに来てもらうことに。Kさん曰く「けっこうすごい人だから急には無理かと思ったけど、たまたま空いてて来てもらえた」とのこと。

 南アフリカの宿舎に行くと小柄なじいちゃんがいた。この人がそのマッサージ師(整体師?)らしい。一緒に2階に上がり、選手の部屋でマッサージするのを横から通訳することに。部屋に行ってみたらその選手はあのローレンスさんだったので、話しやすそうで安心した。

 というかその部屋、六畳間ぐらいの畳張りに年代不詳のブラウン管テレビと、申し訳程度に一応ベッドが置いてあるという昭和の苦学生の部屋みたいな感じで、そこに例のネスカフェコーヒーメーカーやらポテチやら筋トレグッズやらが雑に置きちらかしてあったので笑ってしまった。特にベッドは明らかに小さそうだったので神経質な選手だったら無理だろなと思ったけど、南アフリカさんはあんま気にしてない様子だった。

 じいちゃんがローレンスさんのベッドに謎の扇風機を勝手に置いて「これね、コロナ対策で持って来たんや」←謎)、畳に敷いた布団でマッサージ開始。

 

「あんた、どこの国から来たんや」

「今日はこの後もいろいろあるんやけど、たまたま時間あったもんでね」

「○○にもマッサージする人おるけど、あれ私の弟子や」

「私ね、癌になったけど、もずく食べとったら治ったんや」

 

・・・と、じいちゃんとにかくしゃべるしゃべる誰に向かって言っているのかがもはや不明だしついていけなかったので、とりあえずローレンスさんに言ってることは頑張って訳すことにした。だいぶ序盤にローレンスさんが「彼、何て言ってるの?」と聞いてきたけど、「自分の話と患者さんの話をずっとしておられます」と答えたら「あ、そうなんだ~」ってなってその後は何も聞かれなかった笑(というか私がちゃんと全部訳せたらよかったんだけど、力不足で反省)

 

じいちゃん「あんたどこの人?東京から来たんか?」

私「私は小矢部(富山)で、地元に住んでますよ」

じいちゃん「えー、小矢部にこんな人おるんか、すごいなあ」

とかいう私とのやりとりがまあまあある中、

 

じいちゃん「私ね、この五箇山で生まれたんや」

ローレンス「あの世界遺産の家に住んでたの?」

じいちゃん「そうや、昔はね。今は違うけど」

 

じいちゃん「体が片方に傾いとる。ベッドが小さいからじゃないんか?」

ローレンス「僕はオールを右側に出して漕いでいるから、どうしても傾いてるんだよ。だからベッドのせいではないよ」

 

みたいな会話も成立してた。シャツを脱がせたり体勢を変えたりの指示もさすがにできたので特に問題なく進んだ。しかし背中のマッサージしつつ「この前ね、私んとこずっと来とる90ぐらいのばあちゃんはね、背中のここや、ここがひどかった」と、ローレンスさんの背中の真ん中をペチペチ叩いて私に説明し始めるじいちゃん。「いいからマッサージしてー!」って思ったけどツッコめず、

私「そうなんですか」

 

 そんな中さらに、「私ね、歌うたっとるんや。明日コンサート」「カラオケ行く?カラオケに私の曲入っとるんや」と言い出すじいちゃん。唐突すぎたので一応詳しく聞き返すと、どうも趣味で演歌をやってて、最近新曲を出したから地元で発売記念コンサート的なことをやるとのこと。

 

ローレンス「そうなの?どういうジャンル?」

私「ジャパニーズフォークソングみたいなものです」

ローレンス「それって日本で人気あるの?」

私「うーん、フォークソングなので、今はあんまり・・・」

ローレンス「そっか。南アフリカにもそういうジャンルはあるけど、そんな感じだよ」

っていう私とローレンスさんのやりとり。

そんなこんなで、じいちゃんが「だから私、結構忙しいんや」と言ってきたので訳した直後、

「・・・あっ、もちろん彼はプロとしてお呼びしてるので、マッサージが趣味の人ではないのでご安心ください!」って言ったらローレンスさん爆笑してくれた(いい人)

 

 30分ぐらいの施術中、背中に乗って足で踏んだり、タオルを使って体を伸ばしたりいろいろやる。最後、ローレンスさんを正座させてじいちゃんが後ろから引っ張って体を伸ばすときは、ゴリラがニホンザルの子供におもいっきりのしかかってるような感じだったので、じいちゃんが押しつぶされそうで若干ヒヤヒヤした。あまりに体格差があって全体的に本当に効いているのか不安ではあったけど、とりあえず無事に施術終了

 終始しゃべり倒してたじいちゃんの話を2点にまとめると、「癌になったけど、もずく食べたら治った」「施術後の今日は少し体に違和感があるかもしれないが、明日になればなくなってすっきりするはず」かなと思ったので、そこをローレンスさんに伝えると、「僕も実は数年前に悪性リンパ腫になったんだ。でも治ったんだよ!」とまさかの返答。じいちゃんに伝えると「ほー、そうなんか」。

 

 謎の扇風機を洗濯カゴに入れ、帰ろうとするじいちゃんが私に「これ私のCD。1枚あげるわ」と、どこに隠し持っていたのかCDをいきなりプレゼントしてくれたローレンスさんがじいちゃんと記念写真を撮りたいと言ったので、そのCDを持たせて写真を撮ってあげた。

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ほんわかツーショット

 お昼休憩のときにKさんにいろいろ報告すると、爆笑されつつ、「あの人の整体院行ったら、待合室で本人の曲爆音でかかってるから」とのこと。

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じいちゃん(栃原さん)のセカンドシングル。曰く、すごい人に作曲してもらえたらしい。

 大勢の弟子を従えるすごいマッサージ師なのに歌も出しちゃうっていう、仕事も趣味も両方振り切ってるこのパワフルさ。なんやかんやでめちゃくちゃかっこいいじいちゃんやん・・・。そんなすごい人が五箇山にいるのを知ることができたのも、オリンピックのおかげでした。笑